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【諸星】銀座スパンアートギャラリーと京都国際漫画ミュージアム原画展 

・2013/5/14-18:銀座スパンアートギャラリーにて 画集『不熟』発売記念 諸星大二郎 原画展

画集『不熟』発売記念

諸星大二郎イラスト集の発売を記念しての原画展でした。
20点規模で、妖怪ハンター・陋巷に在り・栞と紙魚子・暗黒神話など。

暗黒神話

ここで感動したのは、ジャンプエース版の暗黒神話の表紙でしたね。中心の弥勒が金色の絵の具で塗られ、周囲に主要人物がそれぞれ赤・黄・白で描かれているのですが、主線も筆で描かれてるんですよね。それと人物のグラデーションが絶妙、文様は水気の少ないアクリルで描かれてて。

陋巷に在り


そして陋巷に在りの絵が多かったんですが、こちらは水気少な目にガッと描いている印象。
特にこの絵が、ヒリヒリと灼け付くような熱さがあるのが…!藤田先生も推してらっしゃいましたね。


・2013/7~9:京都国際漫画ミュージアムにて 諸星大二郎原画展:不熟1970-2012

諸星大二郎原画展:不熟1970-2012

私が行けたのは高橋葉介セレクションと藤田和日郎セレクションでした。
可能なら諸星大二郎セレクションも、全部見に行きたかったんですがいかんせん時間と金がなかった…。

・高橋葉介セレクション
諸星大二郎先生の絵について、「目力がある」とおっしゃられていました。特にちくま文庫版表紙のマッドメンのコドワに目力がある、と。そして文庫版妖怪ハンターの「稗田先生のお顔が怖いです」とも…w
あと画集の描きおろしで描かれた、聖書のアダムとイヴが知恵の実を食べてしまうエピソードをコメディ風にした「リンゴのタルト」を、諸星大二郎先生の貴重な裸エプロンであるとw
「Gの日記」から「少女G」については、人形の青い目と赤いバラの色の対比が良いと。Gの日記、モロ☆お得意の、しばらく正体や真相を隠しといてクライマックスで正体をあっと明かし異形の存在を暴れさせたり奇蹟を起こしたりして読者を驚かせるような短編です。
一方で、画集表紙の「海の女」について興味深い解説をなされてました。手前の手をつなぐ二人の男女が完全な創造物で、岩場にいる海の女と管でつながった女たちは海の女と離れては生きていけない不完全な創造物であり、海の女に対して不満を示すかのように睨んでいる…みたいな感じのこと。それに対して海の女本人は、自分の創造物に対してたいして関心がないかのように見える、というのがミソとも。
高橋葉介先生も短編「海」で、海そのものである巨女を出しておられていたなぁ、とか思い出したり。こちらは「母」というよりは、恋愛/性愛、嫉妬深さを持つ「女」としての「海」って感じでした。
生物が海から陸に上がって進化していったようにこの二人のアダムとイヴも創造主の元を離れ自立して活動していくのでしょう。一方、手前にいる布をかぶった魚は逆に人から魚へと戻って海に帰っていくようにも見えたり。これは「魚の夢を見る男」のイメージで読んでしまうからなのかな。
マッドメンについて、牧歌的なジャングルでなく、闇をはらむ密林であるともおっしゃってたかも。

・藤田和日郎セレクション
藤田先生は、熱狂的な高橋葉介&諸星大二郎ファンを公言していらっしゃいましたね。
屈む怪物

藤田先生が推していたのは「屈む怪物」。古い方の「妖怪ハンター」に何の解説もなく唐突に出てくる。
あのうしおととらのとらの造形の元になった絵とのことです。あの強いのに、現代の電化製品に興味津々・はんばっか大好きと愛嬌があってうしおの唯一無二のパートナーであるとらとは似て似つかぬ絵ですが、確かにフォルムは似てます。
画集での諸星先生による解説では、『中国神話の起源』の一文からイメージしたもの、後に顔だけ変えて『影の街』に使用した、とのこと。うしとらのとらは、元々シャガクシャという名のインド人で白面の者を追って放浪し、中国に渡り獣の槍の使い手になりそして字伏と化して日本では長飛丸と呼ばれるようになった…という来歴があるのですね。藤田先生が見た時は何の解説もなかったのだろうけれど、奇遇にも「中国の妖怪」のイメージで一致したのかもしれません。中国にいたころのとらって感じでさ。
そして「影の街」の巨人は新世紀エヴァンゲリオンの初号機にもインスピレーションを与えたことでも有名。となると、ある意味、うしとらのとらとエヴァの初号機は起源を同一にしているともいえるわけで。まったく似つかぬこの二つのキャラクターが同じ起源を有しているかと思うと、面白いものがあります。

それと、ジャンプコミック版の妖怪ハンター表紙の左端にある丸い石のポカーンとしたような顔は、モロ☆先生によってはじめて出会わされた「異界」に完全にノックアウトされてしまった読者としての自分自身だとか、天の巻の口からなんか出てる無数の亡霊っぽいのはモロ☆先生の描く目力がほしいという自分自身だとかおっしゃられていたのが印象に残りました。
あと、マッドメンで魔物・アエンに呪物を投げるイラストについて、「気持ちの悪い距離」とおっしゃっていたり。至近距離からでなくロングで描いてるのがミソみたいな、そんな感じのこと。その異形の怪物の全貌がよくわかる、それに対するキャラクターの反応や周りの状況がわかる。うしとらではふすまの回がそんなイメージなのかな。ふすまのギョロ目でギョッとさせられた後で、飛行機にまとわりつく手足も見えその全貌がわかって「うわあああ気持ち悪いいいい」ってなるのね。

縄文少女

お二方も激推しだったのは「縄文少女」。
高橋葉介先生は「温かい絵」「温度が上がりそう」、藤田先生は「最高傑作」と評してました、実際私もこの絵大好きです。
手や足首の描き方もうまいし、髪に飾ったたんぽぽが素朴だし、今よりもシンプルで平均寿命も短い社会ながらも朗らかな笑顔を浮かべる…というのが良いのです。
確か、電撃ジャパンの表紙に描いた絵で、雑誌の表紙は超久々だったとかな。
もっと諸星大二郎先生の描く雑誌表紙が見たいですね、知らない人が「この漫画気になるぞ」と思うような絵柄だと思うのです。

ちなみに京都国際漫画ミュージアムって、漫画を読むことができるのですが諸星大二郎先生や藤田和日郎先生の漫画・高橋葉介先生の漫画を一所に集めて読めるようにされてました。姉が高橋葉介の漫画をかなりの量もっているのですが学校怪談はないのでそれを読みました。うーん、やっぱ面白い。お金が貯まったら自分で買おう。

【諸星】諸星大二郎画集「不熟」・サイン会 


・2012/10/26:諸星大二郎画集発売

不熟  1970〜2012 諸星大二郎・画集 Morohoshi Daijiro ARTWORK不熟 1970〜2012 諸星大二郎・画集 Morohoshi Daijiro ARTWORK
(2012/10/26)
諸星 大二郎

商品詳細を見る


ついに画集発売!諸星大二郎は一番好きであり、敬愛してやまない漫画家なので感激でした。
表紙が青空というのが新鮮。
いつも郷愁や寂寥、不安を感じさせるような夕焼け(ムンクの「叫び」が近い)が多かったので。
しかし絵のモチーフ的にグレートマザーとその子供たちというのが多いですね。
これについては高橋葉介先生のコメントが面白かったので後述。

描き下ろし3点のうち1つが、「スフィンクスとオイディプス」。
女性の上半身にライオンの下半身のスフィンクスにもたれるようにまどろむショタオイディプスというのが、アングル的なそれよりもモローのそれを連想させます。

中身も「暗黒神話」の緻密なカラーも、「アダムの肋骨」の極彩色で描かれた鮮やかな異星の情景も、「妖怪ハンター」の神がかっているような鬼に出遭ったような神秘的な奇跡の情景も、「海神記」の荒れた空・海、「マッドメン」の有機的な闇を孕んだ密林の中に立つ二人の少年と少女の新たな神話、「バイオの黙示録」「遠い国から」の叙情的な荒野の景色、「諸怪志異」の怪異が潜む闇のと灯りの対比、「西遊妖猿伝」のダイナミックさと豪華絢爛な中華装束の緻密さが同居する美麗な絵、その他未発表のモノクロなんでもあり。

この方、独特の線と評されることが多いんですが、個人的には滅茶苦茶上手いと思ってます。
人体のフォルムが割と写実的だし、固くない柔らかい線で描いているのが非常にリアルな感じを醸し出しているのだと思います、特に女性の乳房とか…!

それにしても本当に美麗。水彩とアクリルで描いておられるのですが、あの空のピンク・紫・赤・黄色・紺色が混ざった不思議なグラデーションや陰影のコントラストと同居する細部の模様の緻密さとか物凄く憧れます。

なぜか画集の本編でなくカバー部分に諸星大二郎先生×高橋葉介先生の対談が収録されているのですが、高橋葉介先生も好きな漫画家なので興味深い対談でした。姉が高橋葉介好きなんですよね。諸星大二郎好きなら高確率で高橋葉介好き、そして伊藤潤二好きであろう。

対談で高橋先生が「ヘンリー・ダーガー」や「ローラン・トポール」に作風が似てる、とおっしゃってたんですが私も同じように感じていました。2011/4-5のヘンリー・ダーガー展、私も行ったんですよね。
確かにあどけない少女を描くあの独特の線や角・鳥の翼や蝶の翅が生えている異形っぷりなど似てると思います。
ローラン・トポールは、諸星大二郎の漫画を集め始めるちょっと前に近所のレンタルビデオショップで「ファンタスティック・プラネット」を借りて面白い、と思ったんですがこちらも絵がそっくりですね。赤い目に魚人みたいな容姿の巨人ドラーグ族にまるで虫ケラのように蹂躙される人間そっくりなオム族の話。あのシュールでサイケな、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」のような奇妙な植物や生物、まるで虫のように見えてしまう人間。最近BDが出たのですが予告が「進撃する巨人!」だったのには笑ってしまいました。
諸星漫画にも「喫茶店トポール」も出てきましたね。
高橋先生が絵について、〈上手い絵〉〈気になる絵〉〈誰からも愛される絵〉の3つあって、諸星先生のは〈気になる〉絵であると表現。これも同意!有機的で引きずり込まれて呑まれるような感覚に襲われる絵です。

もし暗黒神話の時代にパソコンがあったら~という話もなさってたんですが、個人的に諸星先生のココが凄い!と思ってるのは、暗黒神話のJC版1巻の表紙が遺跡の壁に竹内老人や菊池彦、弟橘姫、隼人らキャラクターの姿がぼんやりと浮かんでいるような所。あれと同じような感じの絵もたくさん描かれているのですよね、生物都市のように生物と無機物が混ざるという衝撃的な絵も描いているんですけど直接的な融合だけでなく、人が回想する~シーンでも、漫画的表現として人と背景や景色、モノがダブって見える絵をよく描く。それが特によく出ているのが「商社の赤い花」ですね。
これはもう、「どうやったら混ぜるという発想が出てくるんだ!」「どうやってそれを視覚化できるんだ!」「そしてどうやったら実際にそれを絵にしてしまえるんだ!」ってなるレベルです、しかも今だったらフォトショとか色々できますけど、パソコンもなく加工や表現の幅も少なかった時代に、手で描いている。これはもう本当に凄い。

カバー下はまさにファンタスティック・プラネットのような絵。後に生物都市とアダムの肋骨、ど次元物語、貞操号の遭難といった様々な作品の元になったかのようなモチーフも多いです。

お気に入りの絵。
アダムの肋骨
天孫降臨
陋巷に在り2
バイオの黙示録
西遊妖猿伝



・2012/11/18:画集「不熟」発売を記念して池袋の西武池袋本店別館にて サイン会

ちなみにこの画集、2012/11のサイン会でサインをいただいております、宝物。
諸星先生ともお会いして握手していただけました!
そして恥ずかしながらファンレターもどきを作って渡してしまったのですが(もっと良いお土産を持ってくれば戸よかったかなとも思いつつ…)、なんと後日暑中見舞いをいただいてしまいました。感激!

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【諸星】2012-2013の諸星大二郎関係のあれこれ 

現在諸星大二郎原画展が開催中です。

というわけで、この1年位の諸星大二郎関係あれこれ。

・2012/10/26:諸星大二郎画集発売

・2012/11/18:画集「不熟」発売を記念して池袋の西武池袋本店別館にて サイン会

・2013/5/14-18:銀座スパンアートギャラリーにて 画集『不熟』発売記念 諸星大二郎 原画展

・2013/7~9:京都国際漫画ミュージアムにて 諸星大二郎原画展:不熟1970-2012

・2013/10/30:諸星大二郎特選集 「男たちの風景」発売

・2013/11/15-20:諸星大二郎 原画展


原画展が多くて充実してます、大体買ったり原画展に行ったりしてます。
詳細は順次個別記事を作成。

【諸星】単行本未収録作「青ヒゲおじさん」「現代間引考」掲載号を入手 

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4/7の土曜にまんだらけに行った時、古いジャンプやCOMも並べてあったので「もしかしたらここならあるかも…」と思い、探してみたらあったので購入しました。

◆「現代間引考」…COM1971年3月号(1971年3月1日号)30p 
\420(購入先のまんだらけでの価格)

◆「青ヒゲおじさん」…週刊少年ジャンプ1974年12月23日52号)22p 
\2100(購入先のまんだらけでの価格)


…このお値段なので買おうかどうか迷いましたが、この先単行本収録されるかどうか分からなかったので思い切って購入しました。共に諸星大二郎の初期作品。40年前の雑誌!

◆「青ヒゲおじさん」…週刊少年ジャンプ1974年52号

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意表つくトリック、高まるサスペンス!小さな悪魔たちがいどむ完全犯罪!! 特別読切30ページ
タコが人を殺した…!"青ヒゲ屋敷"の小さな悪魔たちが挑む、恐るべき完全犯罪とは…!!

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犯人視点で語られる、ミステリー推理小説って感じ。最初の一コマ目から、いたるところに伏線が張られていてその全てが結末に帰結しているので、ゆっくりページをめくりながら読みました。読む前、青ヒゲが主人公になると思っていたので予想と違っていたのでびっくり。(こういう事前知識が殆どない状態で読めるのは幸いだと思う)

扉絵でそれぞれ対になっている2人の少年、が主人公です。「青ヒゲおじさん」のところへと、母親と一緒に越してきた内気な坊ちゃんのような少年薫と、青ヒゲおじさんの甥で神堂家で青ヒゲと共にに暮らしている令が出会います。この読切でちょっと驚いたことがあって、それは時折はさまれるモノローグが薫の視点であることです。一般的には、よそから越してくる、内気で主人公にうってつけの令の視点になりそうなのをわざわざ薫の視点にしたのはなぜだろう。一番最初のコマではこの読切で重要なファクターであるタコが上がっています。しかしあおり文句がネタバレ気味苦笑
その青ヒゲおじさんの家では既に2人奥さんが死んでいる、屋敷にはジャンヌ・ダルクの像が置いてある、ジル・ドレを崇拝していて肖像画も飾っている、そして開かずの間もある…と怪しさ全開…!

ところでもう一人、物語で中心的なポジションを占めているのが隣中学校の山口。父が元青ヒゲの会社の従業員で、クビにされたことから逆恨みで何かと2人に絡みます。「風がふくと企業がもうかる」…この場合の風は不況の風で、悪どい商法ほどもうかるというのです。この山口は「人殺しの悪党ぞろい」と罵り薫をリンチし、令にも悪意を持ってボールを投げついに屋敷に侵入します。学校で彼が令にダブって見た、青ヒゲの姿。

青ヒゲの肖像画、黒く塗られた巨大な凧、老朽化した手すり…

伏線がひとつに収束される。

(ネタバレ:青ヒゲを殺すべく屋敷に侵入した山口が見たベランダの青ヒゲの影を刺そうとしてベランダが外れ転落死する山口。これは薫の山口への復讐で、令のタコに自分が肖像画から切り抜いた青ヒゲの顔を張りつけて勝手に死ぬように仕向けたのだった。)

夜中のタコあげは青ヒゲ家のあととりにふさわしいと語る青ヒゲ、結局あかずの間で見た死体は令のいたずらだったし(でもものすごくグロい!)、今回青ヒゲ自身は特に何もしたわけではありませんでした。しかし、作中での発言を見るとやはり人の命を何とも思わず、人をこき使い、路頭に迷おうとも遠慮なく切り捨てる。恐らく2人の前妻も、計画的殺人によって殺されたのだろう。ジル・ドレ公の本質を残虐で猟奇的な面としてでなく、人の命をなんとも思わない冷酷な面として捉えたのではないかと思いました。「「聖なる怪物」さ 人の命などなんとも思っていなかった点が偉大なのだ…」という言葉にそれが表れているような気がします。青ヒゲの甥である令には既にその素質はあったが、今回以前はただの内気な少年だった薫が小さな悪魔へと変貌する。「けっこうおもしろい遊びだね」と返す姿には、罪の意識などいっさいない。この読切で、令の一人称で語られていたのも、既に青ヒゲ家の跡取りでありこれ以上変化はしない令の視点で、薫が変化していく様を眺めるという作用があったのかなとも思いました。

最後の言葉がすごくうまい、と思った。

「山口がまえにいったのはやっぱりウソだな」「なにが?」
「風がふくともうかるのは企業じゃなくてやっぱり桶屋…棺桶屋さ!」


「風がふくと桶屋がもうかる」から凧と大企業である青ヒゲの会社を結びつけ、完全犯罪の道具にすることで桶屋を棺桶屋にしてしまうのがさすがモロ☆な構成だと思いました。

風がふくともうかるのが棺桶屋とは…。目には目を!山口に大逆襲、令と薫のみごとな犯罪合作!!


◆「現代間引考」…COM1971年3月号(1971年3月1日号) 
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諸星義影名義の短編。初期の作品は、「ジュン子恐喝」「むかし死んだ男」など、後期欠かせない要素となった伝奇・SFの要素が控えめで、社会派漫画のような印象が強い。手塚治虫作品以外の漫画はそんなに読んでいなかったそうなので、どちらかというと漫画より小説や映画の影響を強く受けている、そんな感じ。描写もなんとなく映画っぽさを感じる気がします。
知的障害や子殺し、と扱うテーマが少々危ないので、今後も再録される見込みはあまりなさそうな気がする…

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子供をすてたり殺したりする事件が多いという会話から始まり、知的障害を持つ娘かず江はいつの間にか父親不明の子を妊娠していることで、父親から暴力を振るわれている。この知的障害を持っており、誰にはらまされたのかわからない、そして典型的なクズ親父という設定でしょっぱなから鬱です。

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といっても、かず江は殆ど言葉らしき言葉を発することができないものの不安げで諸星風美少女ともいえる風貌で、また弟のぼるとの関係も良好なのがせめてものの救い…(なのだろうか) そして父親不明とはいえ、本能的におなかの子供を守ろうとして中絶させられようとするのを拒否します。しかし親父に腹パン(えぐい)された上、家を追い出されてしまい一人さまよう。
はたしてかず江が、他人の言葉をどれほど理解できているのかはわからないのだが、彼女の頭をめぐるのは父親の言葉。そして夕方、子供たちが公園で野球に興じる中、河川敷で中年が釣りをする中、幼い娘をしょった父親が散歩する中、どんどん日が暮れ暗くなる中で河川敷の茂みで出産するのですが、この一連の描写が臨場感があってすさまじい陰鬱なオーラを醸し出してる。
そして出産後、作画崩壊 もといかず江が豹変して、子供の首から下を土の中に埋めるのでした。なぜ土に埋めようとしたのだろうか?明確な殺意があれば、首を絞めていただろうに。赤ん坊の息もたえだえな呼吸音が怖い。丁度釣りを終えた男が土手から上がっていくタイミングであったことから助かったとは思うが、かず江は失踪したままなのだろう…

最後は、実際にあった事件に着想を得たらしき文章が書かれている。この事件も、首から下を生き埋めにされたという奇妙な事件であったため、なぜこのような行為が取られたのかを考えてみた結果この読切ができたのだと思う。
タイトルは「現代間引考」であり、間引かれる対象はかず江が産んだ望まれざる子供なわけなのですが、その赤ん坊と同じように知的障害を患うかず江もまた、父親から疎まれ暴力をふるわれ、ついには姿を消しており、「間引き」というタイトルは彼女にもかかっているのでは…?と思ってしまう。

40年経った今では医学や福祉も発展したけれど、彼らや彼らの家庭が生きにくい状況は変わっていない。重いな~

【諸星】シンデレラの沓(ネムキ2012年3月号) 

2012/2/13発売分ネムキ3月号には諸星大二郎の読み切り「シンデレラの沓」掲載。

2012/6/13発売分7月号にも次回作掲載予定。

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